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Travel in Europe ...Extra
■おまけ

 最後まで読んでくださってありがとうございます。写真も何もありませんが、マメ知識としてのおまけです。

 ウィーンからの飛行機でやっと成田空港に到着し、何となく緊張する税関での出来事です。動物検疫所にてベーコンを申告すると持ち込みできませんとの回答でした。検疫所の職員の言い分は以下のようなものでした。

  ・ヨーロッパからの肉製品は飼育状況の証明書が無いと持ち込めない
  ・証明書は個人では入手困難
  ・没収したベーコンは焼却処分される
  ・「決まりなのでご理解下さい」


 え、そんなの酷いよ。納得できない。
 行きに教えてくれれば買ってこなかったのに。

  『ここで食べるなら良いんですか?』
  「はい、食べるのはOKです」
  『なんで食べて良いものを持ち込めないんですか?』
  「動物が食べるのが問題なんです」
  『じゃあ必ず人間が食べるという誓約書でも書きましょうか?』
  「それはダメなんです」
  『なんでですか?』
  「証明書が無いと持ち込めない決まりです」

 「じゃあせっかくなんで食べます」と言い、税関の手前のベンチで急遽、お土産のベーコンのテイスティングを始めました。表面は深い茶色で、断面は鮮やかな赤のグラデーション。切り口からは脂がにじみ出ています。このベーコンを焼却処分だって?だったら全部食うよ。半ば自棄になりつつも、何か良い方法が無いかを考えました。……当然ながら密輸の方法などは無く、600gもの塊をその場で完食することもまた不可能でした。

  『せめて職員のみなさんでおいしく食べていただけませんか?』
  「いいえ、焼却処分します」
  『……もう次回からは申告しません』
  「それは違法ですのでご理解願います」

 ミュンヘンのベーコン職人に本当に申し訳無く思いながら、職員の方にベーコンを渡しました。道中で唯一失望させられたのが日本だなんて、皮肉な話です。
■後日談

 空港では、『お土産を渡さないと入国させません』という状況で頭に血が昇ってしまいましたが、そもそもベーコンの何がいけなかったのでしょうか? 動物検疫について調べてみました。

 特に危険とされている動物疫病は以下の3つで、偶蹄類(ブタ)は、これら全てに感染する恐れがある。

  ・牛疫
  ・口蹄疫
  ・アフリカ豚コレラ


 アフリカ豚コレラを例にとってみる。ヨーロッパではアフリカ豚コレラのワクチンは広く使用されているため、万が一感染しても発症はせず、ワクチンの効果でウイルスの活動は抑えられる。しかし、その感染した個体が加工肉となってもウイルスは死滅しておらず、依然活動が抑えられた状態となる。その加工肉が日本に入り、パッケージがごみとして捨てられた場合、そこに付着した脂などから、最終的に日本の豚に感染する恐れがある。日本ではアフリカ豚コレラのワクチンはあまり使用されていないため、大規模な感染となれば日本の畜産業界が大きな打撃を受ける可能性がある。

 これらの事実を知った上で思い返せば、あのベーコンを持ち込めないのも当然のことと思えます。「決まりだから」を繰り返していた職員だって、もちろんこれらの事を認識した上での対応だったことでしょう。

 専門性のある事柄を伝える際に、その根拠について万人にわかりやすく説明できることは非常に重要です。そして、それを求められるシーンというのは、普段の生活の中に山ほどあります。博識に驕ること無かれ。そんな教訓を得つつ、無学な自分のアレな行動を反省したのでした。