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ルー・ティン・チェンのこと
高雄市で泊まっていたアパートの大家の息子、ルー・ティン・チェン。
40代で大柄な彼は、勤めていた会社が解散して以来、かれこれ5年間失業中
だそうです。

“旅行”のことを“トロウブ”、数字の100を“ハウントリィ”とか、怪しい
英語を使うチェンとは、カタコト同士なんとかコミュニケーションを取ること
ができます。最近PCを買ったそうで、チェンが

 「リブアップデートができない!どうしたらいいんだ!?」

と騒いでいた時に、

 『ライブアップデートね…、ちょっと見せて』

とやり方を教えたのがきっかけて、妙に仲が良くなりました。

 「お礼に僕のPCをいつでも使っていいよ。ウイズ・フリー・チャージ!」

この“ウイズ・フリー・チャージ!”がチェンの決め台詞です。言った後には
必ず「タダなんていい話だろ?」と言いたげな、得意げな顔をします。

 「毎日、5時から近くの中学校でエクササイズをしているんだ。
  キタジマサンもどう? 大丈夫、ウイズ・フリー・チャージ!」

 『あ、今日はいいや』(この後、毎日誘われた)

 「あれ、この部屋はクーラーが壊れてるじゃないか。
  すぐに修理するよ。ウイズ・フリー・チャージ!」

 『……(タダなのは当たり前だろっ!)』


ある日、チェンは早朝に訪ねてきて「ショッピングモールの場所を知ってる?」
と言い出し、聞いてもいないのにショッピングモールまでの道のりを詳しく教えて
くれた後で満足して帰っていきました。

またある日、大家さんの部屋の居間にいた時、チェンは「ニュースを見なよ」と
TVをつけました。しばらく見ていると突然チェンはチャンネルを替え始め、
「これはCNN、これはNHK、これは…」と言いながらチャンネルを切り替えた
後に「一体、どのチャンネルが見たいんだ!?」と聞いてきました。

少しおせっかいでわけがわからない事が多くありますが、その何か役に立ちたいと
いう気持ちは伝わってくる、憎めない人です。


長らくお世話になったアパートを発つ前夜、荷物をまとめていると彼が一冊の
パンフレットを持って部屋を訪ねてきました。

 「このコンピューターショップはここのすぐ近くにあって、
  ここに行けばインターネットができるよ!」

 『ああ、そうなの…??』

もう行く時間ないなぁ、と思っていると、間髪入れずチェンは

 「ウイズ・フリー・チャージ!」

と。この時ばかりは、こんちくしょうと歯を食い縛りました。


Vol.013 2005/08/09



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