ここバンビエンには、これと言った名所も名物もありません。あるのはのどか
な街並みと、安くておいしいご飯。そんな町は、特に観光もせずにのんびりと 時間を過ごす旅人の溜まり場、俗に言う“沈没地”になりがちです。 昼はのんびり夜は静か。時間はいくらでもあるから、今日やらなきゃいけない ことなんか無い。娯楽といえば食べることくらいで、お店の人もゆっくり淡々 と料理してます。都会じゃないから散歩しても特に何も見つからず、帰ったら 妙に疲れてて寝ちゃって………なんて流れでゆるゆると時は過ぎ、時間はたっ ぷりあるはずなのに、その切れ目が見つかりません。 泊まっている宿の喫煙所で出会ったシンさんは、この町を愛する人のひとり。 30代半ばの男性で、黒ブチ眼鏡と、縛ったロン毛と、ひょろっとした体格が特 徴です。旅行の度にその多くをこの町でのんびりと過ごすそうです。 「ここの暮らしを知っちゃったら、日本帰っても…なんかダメっすねぇ…」 シンさんがぽつりと言ったその一言に、胸がざわめきました。沈没が危ないと は気付いてましたが、シンさんはまさにそれにやられちゃいましたと宣言して います。究極のリラックスを与えてくれる沈没地と、それに溺れる旅人と。 そして沈んでいく沈没者から感じる得体の知れなさは、少し恐怖に似ています。 ▽そんなシンさんも泊まるゲストハウス“CHANTHALA” http://www.i-yan.com/travel/vol19/bukken_vangvien.html Vol.019 2005/09/20 |
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