旅の最中のよい香りindex


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┃   旅の最中のよい香り Vol.030
│     2005/12/12 http://www.i-yan.com/
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 ○私は今ここにいます : タイ王国 バンコク

サワッディーカップ、いいやんです。東南アジアの空の玄関口、バンコクへと
到着しました。安宿街として有名なカオサン通りのはずれに宿をとりました。
カオサン通りの賑わいは想像以上で、毎夜遅くまで世界中からの旅人たちが酒
を酌み交わし、商売人たちがひしめき合っています。

今回は、前回のマガジンを発行した直後に勇んで向かった、ポイペトのカジノ
での出来事をお送りします。今までフィクションの中にしか無かったカジノの
入り口はタイとカンボジアの国境地帯という意外な場所にありました。


──今号のもくじ──

  ■カジノ体験記1 −ルーレット入門−
  ◆連載:今週のボイレコ
  ■カジノ体験記2 −ギャンブラーが追い求めるもの−
  ◆連載:What's you mean ?
  ◆サイト更新情報

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□カジノ体験記1 −ルーレット入門−

時計も窓も無いカジノのフロアはホテルの宴会場にも似ています。そこでは100人
を越える数の従業員達が働き、中央の小さなステージからは控えめの音量で生
演奏の歌謡曲が聞こえています。ギャンブラー達は時間を忘れてアツい勝負を
繰り広げており、テーブルごとに和気藹々と黙々と、思い思いの表情を見せて
います。私は現金2000バーツを2枚の1000バーツチップに換えてから、フロア
をぐるりと見てまわることにしました。

スロットマシーン・ルーレット・バカラ・ファンタン・3枚ポーカー…この中
でルールを知っているのはルーレットくらいです。フロア内の飲食は完全に無
料で、壁際に設けられたドリンクバーは自由に利用できます。私はコンデンス
ミルク入りのホットコーヒーを一杯飲み干して、ルーレットの席に着きました。


  ◇◇◇


ルーレットの回転盤には0〜36までの37個の数字があり、ディーラーの投げる
白い球はそのどれかに落ちます。緑色の卓上にひかれたマス目に数字や文字が
書かれており、そこに置くチップの位置のよって、赤/黒、偶数/奇数などの
2択や、2つ賭け、4つ賭け、12個賭けなど多彩な賭け方ができるようになっ
ています。

1000バーツチップ1枚を10バーツ相当のカラーチップ100枚に交換し、まずは腕
慣らしに、それでも真剣に予想しながら、何箇所かの数字の上にチップを2枚
ずつ置いていきます。私の賭けたチップはすぐに他の客のチップの山の中に埋
もれていきました。

 リンリリリーンッ “ OK. No more bet please ! ”

球を投げたディーラーがベルを鳴らし、卓の上に両手を広げて賭けを制止する
その瞬間まで、客達は卓のあちこちにチップの山を積み上げます。そしてその
ほんの十秒後には結果が出て当たりの数字が読み上げられます。


20バーツを何箇所かに賭け続けること数回、だんだんと「次はココらへんに来
るんじゃないか…」と、予測という名の妄想の輪郭が見えてきました。それぞ
れの数字が的中する確率は全て均等なはずですが、結果を羅列してみるとそれ
は必ずしも均一に分散してはおらず偏ってばかりです。その偏りこそが、ギャ
ンブラーを熱くさせる『流れ』と呼ばれるものです。

“24”と“35”に20バーツ、それと19〜36の18個賭け(倍率2倍)に30バーツ
を置いた5回目のゲーム。その結果は見事に“24”にクリーンヒットしました。
おぉぉぉ、きたぁ〜っ…………達成感と脱力感が同時に訪れるような感覚に、
思わずため息が「ふぅ〜」っと漏れます。当選した“24”に積まれたチップの
上には当たりを示す小さな文鎮がちょんと置かれました。

ディーラーはハズレ分のチップをかき集めて脇へと流し、テキパキと配当金の
チップを配ります。私が賭けたのと同じ色のカラーチップ20枚積みのタワーが
3本、その上に端数の小さなタワーが載せられ、ずずいっと目の前に寄せられ
ました。改めて、はぁーっと息が漏れて緊張がほぐれていきます。


  ◇◇◇


1000バーツが数十分の間に約1500バーツになりました。カジノ体験記の結果と
しては上々の出来と言えるでしょう。ここでやめるか、もっと打つか…そんな
葛藤はもはや愚問でした。長らく出番が無くて休眠していた『博打好きの心』
はもはや完全に目を覚ましており、そいつは新たに見つけたこの遊びを前に大
喜びでこう言っています。

 「ええ? ここでやめるなんて、ありえないでしょ!?」

そのとおりっ。こいつを思う存分遊ばせるためにここに来たのです。しかしい
つかは必ず負けるのがギャンブル。負けるまで打つのは愚かなことです。

 「馬鹿は死ななきゃ治らないってね。死ぬまで馬鹿でいいから打たせろよ」

…と、やつは完全に開き直って貪欲に博打を求めています。やっぱりこのバカ
はいずれは飼い慣らした方が良さそうです。カジノを余暇の娯楽として楽しん
でいる金持ち達はきっと、何度かの痛い経験を経た結果だとは思いますが、こ
の心を満足させるさじ加減をよ〜く心得ていることでしょう。まあ、ビギナー
はビギナーらしく思いのままに。熱い勝負はこれからです。


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◇今週のボイレコ

その日は朝から、何か宗教的な儀式が行われていました。カンボジアの首都プ
ノンペン、宿の前の道路に特設されたテントの中には祭壇が作られ、祈りと共
に賑やかな音楽の演奏が始まりました。高僧の祈りは歌声のようであり、太鼓
のビートは細かく刻まれます。その音の中で、主役と思われる数名の老若男女
が、白装束に身をまとい厳かに通過儀礼を行っていました。

 ▽儀式での演奏と歌声
 http://www.i-yan.com/travel/vol30/gishiki.html


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□カジノ体験記2 −ギャンブラーが追い求めるもの−

勝負を始めてからゆうに3時間が経過していました。私はまだルーレットの卓
から離れずにいて、一度の勝負につき200バーツ程度を賭け続けていました。勝
負の度に、何かにすがるように思いを巡らせ、気になる数字や気になる場所に
チップを置きます。それは他の客も同じで、賭け時間が終わるギリギリに意を
決したように置かれた高額のチップが的中するのを何度も見ました。

私はふと、目に飛び込んできた卓の数字“8”に賭けてみようと思いました。
こういう突発的な予感を取り逃がさないように、卓に着いた客達は時間いっぱ
いまでチップを手に握り込んで集中しているのです。縁起を担ぎ8枚のチップ
を積んだその十数秒後、回転盤を廻る白い球は、コッコッコロローン、と小気
味良い音を立てて“8”の真ん中で動きを止めました。

──── 予測が的中したこの瞬間の喜びというのは格別です。何ら確証の無い
予測というものが、まるで信ずれば救われるものであったかのようにすら感じ
られます。自分の予測に確信を持ちきれていなかった時にはそれを反省し、そ
れでも当たったことに対して感謝をするほどです。

ディーラーが卓上のチップを片付けて配当金を配りきるのには数分かかります。
一番多くの配当金を手にする人は、その手順の一番最後に大きな大きなチップ
の山を受け取ることになります。その間、卓上には的中したチップの山がその
まま置かれ、当選者は達成感と余韻にひたり続けることができます。的中した
喜びを最大限に味わえる素晴らしい待遇といえます。


  ◇◇◇


端数のカラーチップを使い切り、4500バーツ分のチップを持ってルーレットの
卓を離れました。始めの1000バーツが3500バーツに増えたことになります。シ
ングル1泊100バーツ、1食20バーツという物価を考えると相当な大金です。

ホットコーヒーを飲んで一息…。ギャンブル熱がクールダウンしていき、それ
に支配されていた心は徐々に平常心を取り戻していきます。ガッチリと勝った
後に訪れる余裕に満ち満ちたこの平常心こそが、大金を張ってまで追い求めて
いる感情そのものです。それは例えば、壮大な映画が最高の大団円を迎え、ス
タッフロールが流れ始めた時。または、好きになった異性に告白をしてOKを
貰った帰り道。それらによく似た圧倒的な充実感が押し寄せてきます。


  ◇◇◇


フロアの一角に人垣が出来ているのを見つけました。ギャラリーと従業員があ
わせて十人ほど立ち止まっています。近づいてみるとそれはバカラのテーブル
でした。7人掛けの卓は半分ほど埋まっており、その中で注目を浴びているの
は白髪の上品そうな婦人です。彼女の手元にはクリアボックスがあり、中には
見慣れない色のチップがギッシリと入っています。

1000バーツチップが40枚、5000バーツチップが20枚、10000バーツチップが20枚。
約100万円に相当するチップがその片手の中にありました。卓の端に立てられた
プレートには『最小賭け額500バーツ』と書かれています。紛う事無き高レート
卓です。まばらな人垣の間から卓上を見ると、御婦人の前には4枚、その連れ
の方の前には2枚の10000バーツチップが置かれていました。合計60000バーツ
が、確率2分の1の勝負の風前に晒されているのです。辺りには期待のこもっ
た緊張感が漂い、皆が固唾を呑んでそのゲームの行方を見守っています。


『ぅぉおお〜〜っ!』と、大きな歓声が上がって、その賭けが的中したことが
わかりました。賭け額と同じ合計6枚の10000バーツチップが、御婦人達の前に
配られます。その様はすぐ目の前で行われているにもかかわらず、まるでガラ
ス越しの別世界の出来事の様でした。

しかしながら、このすまし顔の御婦人もまた博打に心を高揚させる類の人間、
すなわち自分と同類であることにも気付きました。財産の一部ともいえる大金
を賭けて、確率50%の勝負の結果を予測する。次は勝つのか負けるのか、その
気配を感じようとする行為は、一種の病気に分類されるのかもしれません。


大きな勝負が終わった後も、何かトラブルが起こらぬよう、数人の従業員が彼
女にぴったりと付き身辺を警備します。勝負以外の一切に気を配る必要の無い
超VIP待遇です。ギャンブラー達の聖地カジノ。そこでは金持ちほど偉い。
しかし勝負の結果は誰にも平等に訪れるし、財布が空になったら帰るしかない。
極めてシンプルな構造の中に、金と欲と快楽とが混沌と渦巻いています。


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◇今週のWhat's you mean ?

 ▽What's you mean ?
 http://www.i-yan.com/travel/vol30/what051212.html


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│      発行者:いいやん

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