旅の最中のよい香りindex


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┃   旅の最中のよい香り Vol.032
│     2006/01/02 http://www.i-yan.com/
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 ○私は今ここにいます : タイ王国 パンガン島

サワッディーピーマイカップ。明けましておめでとうございます。いいやんです。

カンボジアのポイペトで旅仲間の琢也と合流しました。そこから2人でタイの
首都バンコクへと移動し、数日の後にバスとボートで延べ19時間をかけ、タイ
有数のビーチリゾート、パンガン島へやってきました。パンガン島は、毎月満
月の夜に行われるフルムーンパーティーが世界的に有名な、かつてバックパッ
カーの聖地とうたわれた島です。

熱心な読者の方々へ、ポイペトでのギャンブラー生活のその後をご報告します。
カジノに通ううち、“賭け額が上がっていく病気”の自覚症状が現れました。
聖夜に訪れた未曾有の寒波はそれに拍車をかけて財布を直撃し、積もった勝ち
分の大半がカジノへのクリスマスプレゼントとなってしまいました。しかしそ
れでもなんとか、その間の生活費や交通費やビザ取得代を払ってもちょっと余
る額の勝ちは拾うことができました。 またがんばります。

──今号のもくじ──

  ■カオサン通りのおかまちゃん
  ■パンガン島 カウントダウンパーティー2006
  ◆連載:What's you mean ?
  ◆サイト更新情報

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□カオサン通りのおかまちゃん

旅仲間の琢也と2人、深夜のカオサン通りのはじっこに座っていました。裏通
りのゲストハウスから夜食の買い出しに来たものの、突然強い雨が降りだして、
セブンイレブンのまん前で雨宿りをせざるを得なくなったのでした。

建ち並ぶ商店の軒先の屋根の下をつたって、向こうからセクシーなねえちゃん
の一団がやってきました。バッチリと化粧をし、スラリとしたモデル体型の揃っ
た“彼ら”は、少ししわがれたような低い声で大騒ぎをしています。

「あれ、あなたたちどこ行くのォ?」その中の1人が、なんと日本語で話しか
けてきました。「別にどこってのは無くて…」と答えている間に、壁を背に座っ
ていた私達は5人のレディーボーイ達に囲まれてしまいました。

すると、その中のおとなしそうな1人がおもむろに近付いてきて「となり座っ
ていいですか?」と。「はぁ、どうぞ」と答えて横を見ると、卓也のとなりに
も1人のレディーボーイが寄り添っています。

「名前なんつーの?」「小雪…」小雪の肌は白く、手足は長く骨太で、身長は
私とほぼ同じでした。声はもちろん、ひときわ低いものでした。小雪は「さ、
寒い…」とか言って腕を回してすり寄ってきます。「そうだねーさむいよねー」


そんな状況のまま、他のレディーボーイ達は互いを紹介し合いました。その内
容は不埒千万かつ容赦無く、さらにでまかせを多分に含むものでした。

 『アンタ、×××が臭い!』(日本語のスラングをたくさん知ってます)
 『アンタ1人だけオトコ!』(悪口になるらしい)
 『胸がニセモノ!アタシのは本物!』

言われた方は「そんなことない!」と言って胸を出したりスカートをめくり上
げたり、図星を突かれて切り返したり。すくいようがないほど下品です。その
うち『アンタ顔がでかい!』だの『アンタの名前“お化け”!』だの、少年の
ような無邪気さで罵倒しあいっこを始めました。あんまりにもそれがおもしろ
くて、通行人やタクシーの運転手まで集まってくる始末。


「これからどうするの?このコの部屋でトランプしてお話するヨ。楽しいヨ。」
初めに私達に話しかけてきた、一番日本語のうまい“ワイ”が言いました。琢
也と顔を見合わせつつ「どうしよっか…」と口ごもります。今は日本語での
『こいつらが怪しい奴らかどうか』の裏トークは出来ない状況でした。一瞬の
沈黙をみてワイが言いました。「ダイジョウブ、エッチしないヨ」そんな心配
してねえっ。勝手に“する/しない”選択肢を作ってそんな安心させんな。


ともかく悪い人達では無さそうだ。「こういう展開もアリでしょ」という共通
認識のもと、私と琢也と5人のレディーボーイは文字通り折り重なりながら、
1台のタクシーに乗り込んで夜の街へと消えていきました。


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□パンガン島 カウントダウンパーティー2006

 ▽写真と音声
 http://www.i-yan.com/travel/vol32/cdparty.html


2005年12月31日22時。パンガン島ハドリンのサンライズビーチに到着するとす
でに多くの人々がおり、浜辺全体が大音響に包まれていました。会場の一角で
はファイアダンスのパフォーマンスが行われています。燃えさかる棒や、紐の
付いた火球を華麗に操り、暗闇の中に橙色の軌跡を描きます。

23時。ひとしきり酔いのまわった人々は圧倒的音量を全身に浴びながら、背筋
を波立たせ、腕を振り上げ、膝を曲げ、腰をくねらせ、時に声を張り上げなが
ら音楽に身を任せます。浜辺に沿って並ぶクラブの前面には巨大な音響セット
が組まれ、店内はもちろん階段やスピーカーの上、浜辺まで含めた全体がダン
スホールと化しています。

2006年1月1日0時。新年の到来と共に花火が打ち上げられました。空気の振
動と人々の動きは最高潮に達したまま、渦巻くようにうごめき続けます。規則
正しく訪れる強い音圧に脳は心地良くマッサージされ、不規則に揺さぶられる
全身の骨格は忘れていた動作を記憶と共に思い出させます。


深夜…。冷え込みも雨も無く、人々は半裸のまま、音は相変わらず鳴り続けま
す。屋台は朝まで営業していて飲食に困ることはありません。人々は疲れを承
知の上でなお、鼓膜の振動を四肢にリンクさせる娯楽に興じます。身体の動作
が徐々に緩慢になり脳の判断力も鈍りゆく擬似的な極限状態の中、音のインプッ
トを動きのアウトプットに変換するロジックは、単純な脊髄の反射運動に近づ
いていきます。


早朝…。人々はまだ踊っていました。互いの姿がハッキリ見え
るほど明るくなると熱気は再び上昇し、踊りは激しさを増しました。そのうち
に海岸線が徐々に満ちてきて砂浜は狭くなり、少し小雨が降ってきて、はじめ
て人々は祭の夜がとっくに明けていたことに気付くのでした。宿への帰り道、
分厚い雲の向こうに隠れていた初日の出が、初めてその姿を現しました。


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◇今週のWhat's you mean ?

 ▽What's you mean ?
 http://www.i-yan.com/travel/vol32/what060102.html


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┃   旅の最中のよい香り
│      発行者:いいやん

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