旅の最中のよい香りindex


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┃   旅の最中のよい香り Vol.037
│     2006/02/10 http://www.i-yan.com/
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 ○私は今ここにいます : インドネシア バリ州 バドゥン県 クタ郡

こんにちは、ギャンブライターのいいやんです。

オーストラリアのシドニーを発つ2日前。やり残した事は無いかと考えながら、
足はまた巨大カジノ『スターシティー』へと向かっていました。意を決してポー
カーテーブルの順番待ちにチェックインした後で、金持ちの理解できない賭け
方を観戦することに楽しみを見出しつつ待ち時間を潰しました。

   ◇◇◇

そのアラブ系の若者は、バカラのテーブルに5000ドル分のチップを積んですま
し顔をしていました。周りの人がポカーンと見る中、そのまま2連勝して合計
15000ドルものチップを手にし、直後に3連敗してチップを全て失いました。

彼はおもむろにポケットからドサリと札束を出し、ディーラは5分間かけてそ
れを正確に数えます。新たに手にした5000ドル分のチップはわずか1ゲームで
またしても無くなり、彼は両手のひらを上に向けて無言で席を立ちました…。


──今号のもくじ──

  ■カジノ体験記7 −ポーカーデビュー 机上の空論編−
  ◆連載:今週のボイレコ
  ■カジノ体験記8 −ポーカーデビュー 実践編−
  ◆連載:今週の調味料

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□カジノ体験記7 −ポーカーデビュー 机上の空論編−

カジノ『スターシティー』でテキサスホールデムポーカー(Texas Hold'em Porker)
の勝負を初めて目にしてから、ルールと戦略を学ぶこと3時間、ネットで拾っ
たフリーソフトでゲームの流れを把握すること1時間、カジノの現場で観戦す
ること10数時間…ついに実際にお金を賭けて打つ決心がつきました。


『体験記6』で観戦した、賭け金に上限の無い高レートテーブルを横目に、私
は最もレートの低いテーブルに腰を下ろしました。無表情のオージーのおじさ
ん、目つきの鋭い中国系の若者、ビルゲイツみたいな風貌のサングラスの男、
容姿端麗辛口な美しいお姉様…と、これから勝負する面々は見るからに曲者揃
いで、その手元には例外なく数100ドル分のチップの壁がそびえ立っています。

私の本日の予算は200ドル。カジノへ払う手数料は1ゲームあたり75セントと
格安です。配られる2枚のカードを見て、気に入らなければ勝負を降りていれ
ば、10ゲーム分を見送ってもかかる費用はたったの7.5ドル。焦らずじっくり
とチャンス手を待つことが今日は最優先されます。

   ◇◇◇

私はテーブル上のチップ(お金)の動きをこう把握していました。カジノは毎
ゲーム10人の参加者から総額7.5ドルを集金します。一方、ゲームの勝敗によっ
て動くチップは参加者の間を移動するだけで、参加者たちの持ち金の総額は変
わりません。つまりこのゲームは、ほんの少しずつ減っていく参加者たちの持
ち金の総額の中で、いかに多くを確保できるかを競うのが目的と言えます。

そしてここにもう一つの要素が加わります。チップを使い果たしてしまった参
加者はテーブルを去り、その代わりにたんまりチップを持った新たな参加者が
テーブルへと案内されてきます。負けた参加者が去り、新たな参加者が加わる
ことで、おのずと参加者たちの持ち金の合計は増加します。その増加の頻度に
比べると、カジノが手数料を徴収するスピードは微々たるものです。

結論としてこのゲームで稼ぐためには、無理をせず確実な勝ちを積み重ねて、
下手なプレイヤーが撒き散らすチップを拾うことだと思いました。それを実行
するには、初心者が多いこの低レートテーブルはうってつけだと言えました。


……自分も初心者じゃないか、というツッコミはごもっともです。しかしここ
オーストラリアでは、他の初心者に比べて私にはいくぶんかのアドバンテージ
があると自負していました。それは私に麻雀の経験があることに起因します。

麻雀は、言わば3枚のストレートフラッシュやスリーカードを同時進行で4組
作る複雑なゲームです。また、勝機が無い時でも強制的にリスクを負わなくて
はならない麻雀の勝負形態に比べ、勝負を降りれば完全に自分の資金を守るこ
とができるこのテキサスホールデムポーカーのルールは、私にとってシンプル
かつ安全なものに思えました。


いよいよ勝負が始まります。


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◇今週のボイレコ

オーストラリアの歩行者用信号機に取り付けられた機械。シグナルの変化を特
徴ある音で伝えます。日本と違い、青信号が点灯した後で赤信号が点滅します。

 赤点灯: ポッ……ポッ……ポッ……ポッ……
 ↓
 青点灯: キュントゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥ…
 ↓
 赤点滅: ポッ……ポッ……ポッ……ポッ……
 ↓
 赤点灯: ポッ……ポッ……ポッ……ポッ……

 ▽歩行者用信号の機械
 http://www.i-yan.com/travel/vol37/signal.html


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□カジノ体験記8 −ポーカーデビュー 実践編−

私は緊張を隠しきれないままとりあえず一戦目に参加し、たまたまできたスリー
カードでいきなり初勝利をもぎ取りました。わずか数分で70ドルほど配当を受
け取り、思わずその手がプルプル震えました。しかし、数ゲーム後に再度でき
たスリーカードは賭け金の積み合いの末にフルハウスに敗れ、次のチャンスで
完成したストレートは、それより上位のストレートに惜敗してしまいました。

このテーブルでは参加者が望めば1度に10ドルまで賭け金を増やすことができ
ます。ゲームに参加して勝利できなければ、確実に資金は減っていきます。と
は言え、自分が負けを重ねることで弱いプレーヤーである印象を周囲に与えら
れるのであれば、多少の出費はいずれ訪れる勝利を大きくするための投資だと
割り切ることができました。なるべくゆっくりと資金を減らしながら、配られ
る手札を見ては勝負を降りてを繰り返して息を潜めます。

何人かの参加者が負けて席を立ち、互いにフルハウスを持つ女性2人が激しく
賭け金を積み合い、むやみに賭け金を増やす『レイジングマシーン』と揶揄さ
れるオヤジが現れ…1時間ほどが経ち、私の資金は底が見えてきました。

   ◇◇◇

そんな折、配られた2枚の手札は【7・7】のペアでした。久しぶりのチャン
スです。私はそれを顔には出さず、5ドルチップを出して勝負に参加しました。

テーブル上にめくられた3枚のカードの数字は【4・7・7】。…キタ。僕に
も出来たよフォアカード!! と、ここで浮かれてはいけません。今回のゲー
ムで訪れる勝利をより価値あるものにするにはここからが重要です。そのため
には、他の参加者に気配を悟られないように、今までと同じように目立たずに
いりゃー良いんです。

自分のアクションを決める番になり、私は少し間をおいてからテーブルをトン
トンと叩き「チェック」と言って次の人に順番を回しました。他の参加者たち
も次々と同様にチェックをしていきます。

そんな中、1人の白人の中年男性が賭け金に5ドルを上乗せしました。その理
由にまで気を回す余裕はありませんでしたが、するべきことはわかっていまし
た。私はただ彼に合わせて賭け金に5ドルを追加しました。他の参加者たちも
続々と同様に5ドルを積んでいきます。


4枚目のカードがめくられます。『6』。テーブル上には【4・7・7・6】。
この時私は気付きませんでしたが、今回のゲームでテーブルに並べられたカー
ドは、ストレートやフルハウスなど上位の役を狙える形でした。そのため、最
後の5枚目のカードに希望を託したい参加者が、私を除いて5人、勝負の場に
残っていました。

私が再びチェックをすると、先ほどの男性は賭け金に10ドルを上乗せしました。
2人が勝負を降り、2人がそれに続き10ドルを場に出します。よし、ここだ。
「…レイズ」私はそう言って、男性が上乗せした10ドルにさらに10ドル分を上
乗せした20ドルを場に出しました。長らく沈黙していた私に初めて皆の視線が
集まります。この瞬間がポーカーフェイスの見せ所です。


既にここまでに計20ドルを払ってきている他の3人は、ここで諦めてみすみす
それを失うか、賭け金の合計を30ドルにまで上げて勝負を続行するのかを選択
しなくてはなりません。望みは薄くてもここまできたら引き下がれない、惜し
みつつ追加の10ドルを積む通称“クライング・コール”を選ぶこととなります。

そうして賭け金が出揃い、ディーラーによってめくられた5枚目のカード。そ
れは運命のカードでも何でもなくて、私にとっては見るまでも無いものでした。
「レイズ」私は今度は何の遠慮もせず、残った3人の参加者に駄目押しの10ドル
を要求しました。3人の真剣な表情を見渡すと、思わず口元がほころびました。


「さあ、手は何だったの?ストレート?」

最後まで賭け金を吊り上げた参加者、つまり私が最初に手札を公開する決まり
です。私はパタッと2枚の『7』を見せました。「うぅぅ〜わぁ〜!」と、呻
きと歓声が混じった声にテーブルが沸きました。ディーラーは型通りに他の3人
に「これに勝てる人いますか?」と聞いた後、200ドル近くまで積み上がった
チップの山をひょいっと私の目の前に運びました。

   ◇◇◇

「グッドプレイヤー!」途中で勝負を降りた参加者たちの懐は痛くも痒くも無
いので、ファインプレーに対しては純粋に賞賛の声があがります。1人のアジ
ア系の男性がしきりに話しかけてきます。

「途中、私と目が合った時にあなた笑ったでしょ。だから私には分かってたよ!
 あれ?そこ居たあの男、あっちのテーブルに逃げちゃったよ!あはははは!!」

彼が指さす先を見ると、序盤に賭け金を吊り上げていた中年男性は、いつの間
にやら別のテーブルへと移動していました。

   ◇◇◇

当初の予想通り、私にとってこのテキサスホールデムポーカーは“しっくり”
くるゲームでした。言葉では無くお金を媒体とした押し引きの心理戦はとても
魅力的です。カジノを相手に勝負する必要は無くて、たまたま居合わせた他の
ギャンブラーを相手に、対等な立場で技術と資金と運の総合力を競い合う。そ
れでいて、自分の判断ミス以外での敗北は起こりえない優れたゲームです。

初めての大勝ちを経験した後、私はそのまま他のポーカーファンたちと共に夜
を徹してゲームを続けました。オーストラリアのカジノ通いの最後の日、これ
まで失った額の何割かを取り戻して久しぶりに晴れ晴れとした気持ちでカジノ
を後にすることができました。帰り道に24時間営業のバーに寄って注文した6ドル
のステーキと5ドルの赤ワインが、ポーカー勝利の思い出の味となりました。


 ▽おまけ CASINO STATION
 http://www.i-yan.com/travel/vol37/casino.html


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◇今週の調味料

 ▽タイのパンガン島で生野菜につける調味料
 http://www.i-yan.com/travel/vol37/chomi060210.html


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