旅の最中のよい香りindex


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┃   旅の最中のよい香り Vol.038
│     2006/02/19 http://www.i-yan.com/
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 ○私は今ここにいます : インドネシア バリ州 バドゥン県 クタ郡

スラマッマラム。いいやんです。

バリ島の時はとてもゆるやかに流れます。休暇を過ごす旅行者はもとより、地
元の住人も商売人も、道ばたやビーチの日陰でのんびり時を過ごします。ジャ
ランジャラン(散歩)の途中、そんな人々に日本語で「どこ行くの?」なんて
声をかけられたなら、立ち止まらない理由なんて見つかりません。

東南アジアからオーストラリアの都会に降り立った時のカルチャーショックと
は対照的に、都会の暮らしに加速していた自分のベクトルはバリ島のクッショ
ンの中に完全に受け止められました。時間に限りがあることを忘れてしまいそ
うな気だるい意識の中、太陽はなめらかに空を駆けて、予定していたことの半
分もしないまま今日が過ぎていってしまいます。


──今号のもくじ──

  ■ヘリちゃんのこと
  ◆連載:今週のボイレコ
  ■What's you mean ? 拡大版“CAUTION WET FLOOR”
  ◆連載:今週の調味料
  ◆サイト更新情報

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□ヘリちゃんのこと

バリ島のクタビーチでサーフボード貸しをしているヘリは、ジャワ島出身の23歳
の男性。透明な海と空を1日中眺め、物売りのおばちゃんや旅行者たちと歓談
し、良い波が来た時には自らボードを持って白い浜を海へと走ります。夕方6時
に水平線に沈む夕陽を見届けたら仕事は終わり。ボードを倉庫にしまい、バイ
クで一人暮らしの部屋へと帰ります。そんな日々を2年間ほど続けています。

 ▽ヘリが毎日見るクタビーチに沈む陽
 http://www.i-yan.com/travel/vol38/kuta-sunset.html


「インドネシアに生まれてなかったら、こんなふうじゃ無かったと思うんだよね」

ヘリは、ビーチにいる他の地元民たちと同様、日本語の日常会話を驚くほど流
暢にこなします。「どういうこと?」と聞くと、ヘリはこう答えました。

「日本とか、オーストラリアとか、シンガポールとかに生まれてたらね、
 もっとたくさん給料をもらえるし、色んなことができると思うんだよね」

「…確かに。でも例えば日本人は、バリ島でサーフィンをするために、高い
 お金を払って来て、1週間だけサーフィンして帰って行ったりするでしょう?」

「うん…、そういう人たくさんだね」

「ヘリちゃんみたいな暮らしにあこがれてる日本人は多いと思うよ」

そう言いながらも、私は自分の言葉に全く説得力を感じませんでした。


この界隈に住む若者の月収は、そこそこ良い仕事で80万ルピア(約1万円)だ
そうです。賃貸アパートの家賃は月25万ルピアが相場です。しかしそれに対し、
ジュースは1瓶3000ルピア、飲料水は1.5リットルで2000ルピア、食堂のご飯
は5000ルピア、レストランの食事は2万ルピア、ガソリンは1リットル5000ルピア、
インターネットは1分200ルピア…と、生活費は意外とかさみます。リゾート
ライフや買い物を楽しむ旅行者と付き合いながらも、常に倹約していなくては
資金をまわすことが出来ないのが現状のようです。


ヘリも資金繰りには苦労しています。新品のサーフボードを嬉しそうに見せて
くれましたが、その代わりにテレビと冷蔵庫とベッドが部屋から消えました。
いま乗っているバイクも安いものに買い換えることを検討しているそうです。

それでもヘリは前向きです。いまは色々な経験を積む時期で、サーフィンはも
う充分やったのでまた別の仕事を探している。いつか自分のビジネスを始める
時には、サーフボードもバイクも全部売り払うつもりだ、と教えてくれました。

そんなヘリの部屋には、小さな南京錠のかかった大きな貯金箱がありました。
「これがいっぱいになったら、ハワイに行こうかな」
と、ヘリおどけて言いましたが、もしそれを500ルピア硬貨で満たしても航空
券の代金にすら足りないということはもちろん分かっているようでした。


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◇今週のボイレコ

シドニーのシティーホール駅前の交差点で、変わったミュージシャンを見つけ
ました。横に渡した鉄パイプに水を入れたビール瓶をぶら下げ、サラダ用の木
のスプーンを手に瓶とドラムを叩いて演奏します。大きく揺れる瓶をとらえる
スプーンからは細かい木片が飛び散り続け、演奏は激しさを増していきます。

 ▽“瓶琴”の演奏
 http://www.i-yan.com/travel/vol38/bin-music.html


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□What's you mean ? 拡大版“CAUTION WET FLOOR”

オーストラリアで毎日必ず見かけた標識。

 “CAUTION WET FLOOR”

という警告文と、それに添えられたバランスを崩して今にも転びそうな人の絵。
雨の日の全てのショッピングモールで、トイレや飲食店やフードコートなど、
床に水がこぼれる可能性のある全ての場所で、そしてそのまま置き去りにされ
た乾ききった床の上で、イラストの棒人間たちは今日も転び続けています。

 ▽What's you mean ?
 http://www.i-yan.com/travel/vol38/what060219.html


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◇今週の調味料

 ▽バリ島の旅行者向けカフェの調味料
 http://www.i-yan.com/travel/vol38/chomi060219.html

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│      発行者:いいやん

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