旅の最中のよい香りindex


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┃   旅の最中のよい香り Vol.047
│     2006/05/31 http://www.i-yan.com/
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 ○私は今ここにいます : インド共和国 連邦直轄領デリー

ナマステ。いいやんです。二週間のご無沙汰でした。

日本からやってきた姉と弟に再会し、1年ぶりに3兄弟水入らずの10日間を過
ごしました。バラナシを後にする際の旅仲間たちとの別れ、そしてここデリー
での姉弟との別れ。旅には出会いと別れが付き物です。

誰かと出会い、そして別れて一人旅に戻っていくとき、いつも感じる思いの中
には、寂しさとそれを上回る大きな開放感があります。思いのままに踏み出せ
る新たなる一歩をどの方向にしようか、広い世界が手招きして待ってます。


──今号のもくじ──

  ■バラナシの夜明け
  ◆連載:今週のボイレコ
  ■高級みやげ物店の舞台裏
  ◆連載:今週の調味料
  ◆サイト更新情報

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□バラナシの夜明け

早朝5時……朝もやのかかる空が徐々に明るんできました。

カン、カン、カン、カン、と小さな鐘の音が遠くから聞こえ、ガンジス川に捧
げられる祈りの声がどこからともなく響きます。空には無数の鳥たちが飛び交
いながら、互いに接近しては何か意思疎通を行っています。

ガンジス川を超えた向こうに広がる地平線に薄く広がる深緑色の木々から橙色
の真円がゆっくりと昇ってくるにつれ、川辺にいる人々の真っ黒いシルエット
に色がついていきます。

ゆれながら光る水面にはボートの影が幾艘も浮かび、ゆったりと川を滑ります。
水際に並べられた平らな石の前では、男たちが大きな布を何度も石に打ちつけ
て洗濯をしています。洗い終わった布はガートと呼ばれる石階段に並べられ、
昼を待たずして乾ききります。

早朝のガートにはたくさんの人々が沐浴に訪れます。人々は石階段を下り、着
の身着のままで聖なる流れに身を浸して全身を清めます。

まだ涼しいこの時間帯は、街にも人にも活気が感じられます。太陽はもう目視
できないくらいに輝き始めて、ガートでは子供たちがクリケットに興じ始めま
す。今日もまた暑い暑い昼間が幕を開けようとしています。

ガンジス川のほとりの聖地バラナシ。この風景はきっと、いつまでも変わらず
続いていくことでしょう。


 ▽バラナシ 夜明けの風景
 http://www.i-yan.com/travel/vol47/baranasi_morning.html


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◇今週のボイレコ

バラナシの迷路のような路地をたどると、ガネーシャ神がまつられたとある寺
院へとたどり着きました。参拝者が次々と訪れる傍らで歌うたいが宗教歌をろ
うろうと歌います。

 ▽ガネーシャ寺院の歌うたいの美声
 http://www.i-yan.com/travel/vol47/ganesh.html


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□高級みやげ物店の舞台裏

「じゃあさ、お願いなんだけど、次の店では10分くらい商品を見ながら、
 『これはいくら?』『グッドクオリティ!』とか言ってくれないか?」

これが、デリーの街中で声をかけてきた18歳の学生ラビの本音でした。酷暑期
の2ヶ月間、多くの学校は夏休みになります。この時期、学生たちは街で旅行
者に声をかけて“ビジネスの練習”をするそうです。

「そうすれば僕は教科書を買うためのクーポンを手に入れられるんだ」

OK、わかったよ。私はラビのために一肌脱ぐことにして、入り口に警備員が
座っているいかにも高級そうな土産物屋へと連れられていきました。



店内にはジュエリー、家具、木彫りの像、金属の神像、楽器の数々、大理石や
骨から作られたチェスセットなど高価な品々が並んでいます。ヒゲを生やした
店員は私を見るなりにこやかにこう言いました。

「ユー・アー・ラッキー! あなたは今朝一番目のお客様です。インドではそ
 の日初めてのお客様から儲けようとはしません。その分、神様にお礼をします」

よく言うもんだ。適当に選んだカーリー神の銅像は65ドル。少し小さいのでも
25ドル。手のひらに収まる木彫りのシンプルな象の像ですら5ドルもします。

「さあどれがお好みですか? 選んだものをボスに頼んでもっと安くしますよ。
 …スタチューは好みじゃありませんか、では茶葉やスパイスはどうでしょう」

地下のフロアにはシルクやターバンや民族衣装まで取り揃えているそうです。
そろそろ10分が経とうとしていました。私がその店員に、何も買わずに帰るこ
とを告げると、その店員の態度は急変しました。

「何も買わずに見るだけだったら午後に来るべきです。午前中は神様にお祈り
 をする時間だから、午前中に店に来て何も買わないのは良くないことです。
 さあ、あなたは何を買いにここに来たんですか?」

ごめんなさい帰ります。そう言って私は店を後にしました。



店を出ると、外で待っていたラビは私に駆け寄ってきました。

「どうだった?」

まーまーだね、あとやっぱり高いよ。クーポンは手に入れた?

「うん、どうもありがとう」

ちらっと見せてもらったクーポンの額面は、見間違いでなければ100ルピー
(約2ドル)でした。インドの人々の9割が日に2ドルの困窮生活を送ってい
ると聞きます。それを思えばかなり効率の良い仕事です。

しかしながら、金持ちの旅行者をつかまえて土産物屋へ連れて行くというのは、
考えてみれば並大抵のことでは成し遂げられません。そのためラビは襟付きの
シャツにプレスの効いたパンツをはき、髪を固めて身なりを整えています。英
会話の能力だって相応に求められることでしょう。

インドのビジネスの世界には、こんなふうに比較的裕福な家庭の学生がバイト
感覚で参加できるような仕組みもあるのだ、と私は大いに感心させられました。


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◇今週の調味料

 ▽インド・デリーの安宿街の食堂の調味料
 http://www.i-yan.com/travel/vol47/chomi060531.html


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 世界各国の食べ物の情報をお寄せ下さい。大概のものは口に入れて
 レポートいたします。  宛て先はこちらまで→ myugo60@hotmail.com

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│      発行者:いいやん

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