旅の最中のよい香りindex


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┃   旅の最中のよい香り Vol.050
│     2006/08/04 http://www.i-yan.com/
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 ○私は今ここにいます : インド共和国 ウッタランチャル州 リシュケシュ

ナマステ、いいやんです。アシュラムでの6週間にわたるヨガ&哲学レクチャー
を修了しました。旅先で何かを学ぶことに専念する期間というのは、その土地
での暮らしの基盤が作られ、顔見知りができ、生活に規律と息抜きが生まれて
いきます。それは引越し先での生活に慣れていく感覚に似ています。

出発をいつにするのか、ここでの生活が名残り惜しくてもそれは決めなくては
いけないことなのです。

──今号のもくじ──

  ■スワミ・ジーのこと2
  ◆連載:今週のボイレコ
  ◆連載:今週の調味料
  ◆訂正

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□スワミ・ジーのこと2

インド哲学レクチャー講師のスワミ・ジーこと Swami Dharmananda 氏。26年
間もアシュラムに勤めるだけあり、哲学的な教えを噛み砕いて生徒へと伝える
技術はいぶし銀だ。その日スワミ・ジーは珍しく自身の体験談を話し出した。

そのときの話題は、“心の奴隷でいることは、不幸なことだ”。


  +++


若き日のダルマナンダは、来る日も来る日も修行に明け暮れていた。ダルマナ
ンダには自負があった。私はタバコも吸わない、酒も飲まない、ドラッグもや
らない、私は清らかだ、神聖だ、私は修行して解脱するんだ。そんな気持ちを
秘めたまま、瞑想をし、心の中で聖音のマントラを繰り返し繰り返し唱える。

「オーム…オーム…オーム…オーム………」

しかしはたと気づくと、いつの間にかダルマナンダは別の言葉を唱えていた。

「スイーツ…スイーツ…スイーツ…スイーツ……」

…ダルマナンダは大の甘いもの好きだった。集中力は途切れ途切れになり、頭
にはお菓子が浮かぶばかり。「これが終わったら町へ行って…」と考え始める
と、ますます瞑想を続けるのが難しくなる。

瞑想の時間が終わやいなやダルマナンダは周囲の人たちに1ルピーをねだって
まわり、合計4ルピーを集めることができた。そして町まで3kmの道のりを
「スイーツ、スイーツ」と繰り返しながら陽気に歩く。まっすぐお菓子屋まで
向かい好物の『ラスグッラ』を4個買い、ひとときの幸福を堪能したのだった。

 ▽ラスグッラ
 http://www.i-yan.com/travel/vol50/rasugurra.html


楽しみが終わった帰り道……3kmの道を歩きながらダルマナンダは考えた。
「なんだこれは?なんだこれは?お菓子のためになんでこんなに歩いている?」
こんなことではいけない。ダルマナンダはその日の日記に『もうお菓子は食べ
ない』と500回も繰り返し書きつづり自らを戒めたのだった。

しかし、翌日の瞑想の時間になるとまた頭の中には…
「…スイーツ…スイーツ…スイーツ……」
そんな日々が実に6週間も続いてしまった。ダルマナンダは猛省した。

                             後半へ続く▼

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◇今週のボイレコ

夕方、商店街を歩いて抜けたところの、ガンジス川へと下る石階段ガートでは
プージャーと呼ばれる儀式がとり行われます。生演奏に生歌、人々の手拍子と
コーラスはガンジスの流れに吸い込まれて下流へと流れていきます。

 ▽リシュケシュのプージャー
 http://www.i-yan.com/travel/vol50/puja.html


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□スワミ・ジーのこと2 後編


ダルマナンダは来る日も来る日もお菓子への誘惑にさいなまれていた。思い悩
んだダルマナンダはついに師匠に相談した。

「グルジ(お師匠)、我慢しようとしてもお菓子を食べたくなってしまうんです」

師匠は答えた。

「それなら好きなだけ食べたら良い。アシュラムへの寄付金で買って食べなさい」

ホントですか!とダルマナンダは大喜びでまた町へと向かい、大きな器に一杯
のラスグッラを買った。そしてガンガーの川原へと場所を移し、人気の無いと
ころに座ると、思う存分ラスグッラをほおばった。夢のようだった。食べに食
べ合計22個を胃に納めた。

そして23個目のラスグッラを口へと運んだとき……喉の奥に何かがこみ上げて
来るのを感じた。突如、ダルマナンダは嘔吐した。飲み込んだものを全て吐き
出してしまい、そのショックに呆然とする。

「なんだこれは?なんだこれは?なんで自分はこんなことをしているんだ?」


  +++


「…そのときの私こそが“心の奴隷”です。私たちには自分がやりたいように
 行動する自由があります。しかし欲望や怒りや妬みなどに耐えかねた心が、
 それを満たそうと体を動かすことは、奴隷。奴隷そのものです」

スワミ・ジーはそう言って話をきっちりと締めた。が、締まりが悪い。聞いて
いた生徒たちも、当のスワミ・ジーまでも今の話を頭の中で思い返してニヤニ
ヤしてしまっている。笑い話のフォローも含めてスワミ・ジーはこう続けた。

「今は、欲望の主人(Master of desire)になりました。お菓子はもちろん楽
 しんで食べられるし、我慢することもできる。もうお菓子は私を呼びません。
 奴隷から開放されると共にそのストレスからも自由になりました」

満足気な表情でしばらく余韻を味わってから、スワミ・ジーは次の話題へと入っ
ていった。


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◇今週の調味料

 ▽インドの調味料 ハリ・チャトゥネ
 http://www.i-yan.com/travel/vol50/chomi060803.html


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◇訂正

“Vol.49”中の『ネパール風餃子モモ』は『チベット風餃子モモ』の誤りでした。

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│      発行者:いいやん

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