旅の最中のよい香りindex


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┃   旅の最中のよい香り Vol.054
│     2006/10/03 http://www.i-yan.com/
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 ○私は今ここにいます : パキスタン・イスラム共和国 ペシャワール

アッサラーム・アライクム。いいやんです。

前回発信したパキスタン北部のフンザからギルギットへと下り、山間部を2日
かけて西へと向かいチトラールへ、そこから南下してアフガン国境の近い歴史
ある街ペシャワールへとやってきました。

この街はイスラム一色。旅行者が人々の好奇の目にさらされるのは避けられま
せん。大人からは質問責めに遭い、子供からは「チン(中国人)」とからかわ
れ、店員には「カム、シッダン」と呼びつけられ、カメラを見るや写真を撮る
よう要求され、知らない言語でえんえん話しかけられ、無視しても根気良く声
をかけられ、もーホントに心がヘロヘロになるまで疲れさせられます。こんな
に挫けそうになる街はそうそうありません。

 ▽ペシャワールの風景
 http://www.i-yan.com/travel/vol54/peshawar.html


──今号のもくじ──

  ■ペシャワールの人々のそんな性質
  ◆連載:ボイスレコーダーリプレイ
  ■パキのチャパティの魅力
  ◆連載:テーブルの調味料

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□ペシャワールの人々のそんな性質

通勤電車に揺られながらふと思う。こんなにも人々がひしめいているのに、しゃ
べっている人は誰もいない。たまたま乗り合わせたアカの他人にも気軽に声を
かけ合うようになればけっこう楽しいだろうなあ……

以前、日本で考えたこんな妄想を思い出したのは、この街ペシャワールがその、
アカの他人にも気軽に声をかけることを実現していたからだ。街を歩けばすぐ
に「How are you ?」と声がかかる。「どこへ行くの?」「何がしたいの?」
「他になにかできることはあるかな?」人々は親切で誠実で気前が良く優しい。
子供からも「How are you ?」、足を止めれば「What's your name ?」、すれ
違いざまにも「How are you ?」、手にさげたビニール袋を見ては「それ何?」、
チャイを飲んで休憩してるところにも通りがかりに「ハッロ〜!ハウアーユー?」
えーとー、おまいら、そろそろいいかげんにしてください。


望まない過剰までの接触に対して日本人の感性は「気安く声をかけられた」
「的外れなおせっかいを受けた」という解釈をする。しかし人々はただ好意的
に接しているだけで、そんな受け取り方があるとは思いもよらないだろう。日
本人が感じる“失礼なこと”は日本の儀礼にはずれる行為であって、パキスタ
ンの人々のそれとはうまく重なっていないようだ。

そんな文化的な違いを背景として、人々は全く悪気無く、旅行者という新しい
おもちゃで遊び始める。握手を求めおおらかに接し、聞きたいことをかたっぱ
しから質問し、問題を解決しようとしゃしゃり出て、知らないことにも無理し
て答え、言葉の壁をものともせず、俺達は友達だ兄弟だろうと同意を求める。

それを見つめる野次馬たちはさらにたちが悪い。挨拶もなく円周上に取り囲み、
興味と警戒心の混じる眼でこちらを見据え、小声で何かささやき合い、おかし
な部分を見つけては小馬鹿にし、眼を見返せば緊張し、近づけば遠ざかる。同
じ無地の上下の服を着た無個性な『集団の中の一人』の立場から監察を続ける。

通りを歩く人々は絶え間無く無数に溢れる。そのほとんどがまるで間違い探し
をしてるかのように旅行者の姿を見つけ、異常な好奇心を発揮する。気が済め
ばすぐ冷めてしまうその好奇心の相手をし続けることはあまりにも不毛だ。


こんな愚痴をこぼすほど、この街の人々が喰らわせてくるカルチャーショック
は心を揺るがす。異文化はいきなり受け入れられるものではない。その異文化
を解釈し、それに適応するための能力を身につけてはじめてそれは実現される。
半ば強引に会話が始まり『集団vs一人』の図式を強制的に作らされるこの街で
は、困難なその状況への対処法をむりやり開拓させられていく感覚がある。


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◇ボイスレコーダーリプレイ

山間の町チトラールの郊外にあるカラッシュ谷の村々には独持の文化がある。
言語があり、民族衣装があり、地酒があり、薪を焚いて山の幸を食べる。人々
は音楽を愛しており、夜がふけると家々からは太鼓や笛の音が聞こえてくる。

「家の中では子供が寝ているからね」

そう言って笛吹きは戸口に立ったまま長いこと演奏をしていた。

 ▽カラッシュ谷の村の笛吹き
 http://www.i-yan.com/travel/vol54/flute.html


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□パキのチャパティの魅力

「パキスタン料理ってどんなかんじ?」
そう聞かれたら私は、
「インド料理をおいしくして、肉もふんだんに使った感じ」
と答えるだろう。この回答は正確とは言えないが、私はある程度の根拠があっ
てそんな意見を持っている。パキスタン料理にはどれも、インド料理には無い
『心憎い一手間』がかかっているのだ。

例えば主食のチャパティひとつとっても違う。インドでは全粒粉を水で溶き焼
き上げた素朴なものだが、パキスタンのものは厚身で塩味がつき、表面はこん
がり、中はもちっとしたコシがある。インドのレストランでは店舗ごとに釜や
フライパンでチャパティを焼き上げるのに対し、パキスタンのレストランでは
近所の“チャパティ屋”が焼いた専門店の確かな味が運ばれてくる。

 ▽チャパティのいろいろ
 http://www.i-yan.com/travel/vol54/chapati1.html


チャパティの焼き方には、インドとパキスタンとで大きな違いは見られない。
あらかじめ延ばした生地を布クッションに乗せ、釜の側面にボスッと貼り付け
る。強い熱で一気に火を通して焦げ目がついたら、鉄の棒ではがして釜から取
り出す。パキスタンで見られるチャパティ屋では、広いスペースを使ってチャ
パティ作りに専念しているため、洗練された見事な手さばきや流れるような動
きを目にすることができる。

 ▽チャパティの焼き上げ
 http://www.i-yan.com/travel/vol54/chapati2.html


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◇テーブルの調味料

 ▽インドの観光地の食堂のテーブルの上
 http://www.i-yan.com/travel/vol54/chomi061003.html


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