旅の最中のよい香りindex


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┃   旅の最中のよい香り Vol.060
│     2006/12/24 http://www.i-yan.com/
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 ○私は今ここにいます : ヨルダン・ハシミテ王国 アンマン

アッサラームアライクム、いいやんです。

ウクライナのオデッサから船に乗り、黒海を縦断してイスタンブールに舞い戻
りました。それから真っ白な石灰棚に水が流れる風景で知られるパムッカレを
経由し、トルコ南部の国境を越えてシリアへ入国しました。シリアを大急ぎで
通り抜け、クリスマスはヨルダンの主都アンマンで迎えることとなりました。

 ▽旅のダイジェスト
 http://www.i-yan.com/travel/vol60/digest_vol60.html

年の瀬が迫り、旅行者たちの間では「年末年始をどこで過ごすか?」が話題に
挙がります。目的地が定まると、期限内にどうやってそこまで行くかという計
画をあれこれ練り始めることとなります。かくいう私も、年末までにエジプト
にたどりつくために、シリアとヨルダンを各1週間で駆け抜けている最中です。
旅行者の間にも師走の忙しさははっきりと存在しています。

──今号のもくじ──

  ■イスタンブールの沈没宿の風景
 ◆連載:ボイスレコーダーリプレイ
  ■ジャランジャラン・アレッポ
 ◆連載:テーブルの調味料


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□イスタンブールの沈没宿の風景

世界のあちこちに、日本人旅行者が溜まり場としている安宿が存在する。そこ
では近隣諸国の情報交換や体験談、日本のニュースや地元トークまで様々な話
題に花が咲く。一人旅の者同士、久しぶりに将棋やトランプで遊んだり、日本
の活字を目で追う作業にひたったり、そんなことをしているうちにあれよあれ
よと日々が過ぎてしまうため、居心地の良い宿ほど『沈没宿』と呼ばれ、旅人
に恐れられつつも親しまれている。


「あのーどなたか『タッチ』の10巻をお持ちですか…?」
「あれ!?無い!?それ何巻!?」
「8巻です」
「あ、そこの上のじゃないすか?」
「えっとそれ何巻?あ10巻だあ、あったよ!」
「…よかった。じゃあこれお借りしますね」
「どうぞどうぞ!」

「この後はどちらへ?」
「私はシリアですね。それからヨルダン。ヨルダン行かれました?」
「4年前くらいに行きましたよ」
「死海はどうでした?」
「死海ですか。面白いんですけど、ちょっと問題というか何というか…」
「あれはですね、いたいんですよ」
「そう!最初は良いんですけどね」
「???」
「つまり…入って10分くらいすると、ケツの方にこう滲みてきて…
 イタイイタイイタイ!って」
「あれ、僕はだいじょぶでしたよ。2時間くらいプカーっと」
「まじっすかあああ!?」
「そうとう強い粘膜をお持ちですね」
「いやそれほどでも」

「しまった、今日サバサンド食べてない!」
「あ、俺も。1日1サバの目標が3日目にして…」
「もうすぐ夕飯だしなあ…今日のシェア飯(※)なんすか?」
「今日は親子丼です」
「おおおー。親子丼なんていつぶりだろう」
「俺はバラナシで食ったなあ」
「俺はたぶんデリー以来」
「デリーってあのオクラ丼がある店?」
「そこそこ!」

※シェア飯:宿泊者の大半が参加して割り勘で食べる自炊料理。和食中心。

「さっきジュースをくれる変なおっさんに会ったんだけど…」
「え、それ睡眠薬強盗だよ!」
「まじで、全然知らなかった」
「あの小太りのやつ?あいつ捕まったって聞いたけどもう出所してきたんだ?」
「そうみたい。『ピーチジュース!』とか言ってわたしてくるけど、笑顔で
 『飲んでみて』って返すと、スポーンって放り投げて行っちゃうんだよ」
「ぶははははは!」

「そういえば、イスタンブールって学生証つくれますよね?」
「うん。あれ誰かつくらなかったっけ?」
「僕つくりましたけど、正直おすすめできないですね」
「タイでつくるより良いって聞いたんだけど…」
「カオサンのが質は上ですよ。イスタンのは名前とか手書きですし」
「学生証だったらアゼルバイジャンで本物がつくれるよ。つくったの見ます?」
「本物?」
「はいこれ、どうぞ」
「…上海大学」
「私、上海に留学してたからそこはウソじゃないんよ」
「本物ってことは、本当に学生なんですか?」
「いややまさか。そうじゃなくってえ…」

「おいーす、じゃあ出発しまーす」
「おー。じゃあまた」
「年末、ダハブで」
「帰ったら綾瀬で遊びましょう」
「うーす。行ってきまーす」


旅行者同士の会話にはやや独持さがある。数え切れない出会いの中で、相手の
名前や年齢を把握しないままスムースに会話をする術が身につくからだと私は
憶測する。各自思い思いのことをしながらテーブルを囲み、長期滞在者も初顔
も好きなように雑談の輪の中に口を出すこのしゃべり方は、気遣いも気負いも
要らず気疲れしない。そうしてますます沈没ライフは充実してゆくのだった。


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◇ボイスレコーダーリプレイ

イスタンブールの旧市街でアコーディオンを演奏する少女。立ち止まって聴い
ているとしばらくして手を差し出し「お金ちょうだいよ、ユーロをお願い」と。
ルーマニアから来たのだそうだ。

 ▽アコーディオンを奏でる少女
 http://www.i-yan.com/travel/vol60/accordion.html


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□ジャランジャラン・アレッポ

ついに来たアレッポ。石鹸の枕言葉アレッポ。シリアにあるとは知らなくとも、
どこかでアレッポの名前を聞いたことのある方は多いはず。そんなアレッポを
例によって食欲に身をまかせてぶらり。

 ▽ジャランジャラン・アレッポ
 http://www.i-yan.com/travel/vol60/jalanjalan_aleppo.html


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◇テーブルの調味料

 ▽トルコの飯屋のテーブルの上
 http://www.i-yan.com/travel/vol60/chomi061224.html


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※ジャンクフードから伝統料理、怪しい缶詰や調味料に至るまで、
 世界各国の食べ物の情報をお寄せ下さい。大概のものは口に入れて
 レポートいたします。  宛て先はこちらまで→ myugo60@hotmail.com

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┃   旅の最中のよい香り
│      発行者:いいやん

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