旅の最中のよい香りindex


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┃   旅の最中のよい香り Vol.064
│     2006/03/09 http://www.i-yan.com/
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 ○私は今ここにいます : ウガンダ共和国 カンパラ

オリオチャ、いいやんです。エジプトのカイロから飛行機でウガンダのエンテ
ベまで移動し、今月より東アフリカの旅が始まりました。

しかし暑い……赤道直下の町カンパラの陽射しはギラギラと輝き、影はただ足
元に黒い水たまりのように落ちています。そんな強い陽から身を守るためにか、
人々の肌は黒光りして髪はチリチリ、胸毛やワキ毛まで細っかいチリチリが毛
玉化しています。男性は9割以上が丸坊主、女性も多くは短髪で、ドレッドや
ロングヘアーのエクステンションを付けて街行く姿を見かけます。

客引き兼店番、バイクタクシー、ちゃきちゃきした足取りの青年、その他たむ
ろしてる男たち、買い物をするおばちゃんたち…。湿った気候もあいまって東
南アジアに暮らす人々を連想させられます。夕方に日陰に入る道路は人々の憩
いの場。夕闇の訪れと共にあちらこちらに縁台よろしく長椅子が現れ、ビール
片手に夕涼みをする人々が増えてゆきます。

 ▽カンパラの風景
 http://www.i-yan.com/travel/vol64/uganda.html


──今号のもくじ──

  ■ウガンダで穀物をお腹につめこむ
 ◆連載:ボイスレコーダーリプレイ
  ■旅のひとコマ:カイロ国際空港
 ◆連載:テーブルの調味料
 ◆サイト更新情報


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□ウガンダで穀物をお腹につめこむ

ウガンダ人はいったい何を食べているのか。それを知るには安飯屋へと足を運
ぶのがてっとり早い。巨大迷路のようなオウィノマーケットを中ほどまで進む
と、食堂の大きな木のテーブルに男たちが肩を寄せ合って座っているのを見つけた。

 「いらっしゃい、何にする?」
 「何がありますか?」
 「肉もあるし、魚もあるし、豆もあるよ」
 「魚はいくらですか?」
 「どれも1000シリング」
 「じゃあ魚をください」
 「ごはんは何にするかい?」
 「…?」
 「ごはんは何にするかい?」
 「えぇぇ?えぇっと…」

私が魚を注文するとおばちゃんは“Which food do you like ?”と聞いてきた。

おかずの他に、ごはんにも選択肢があるのがウガンダ食の大きな特徴だ。食用
の青バナナを蒸したマトケ、トウモロコシ粉で作られたそばがきのようなウガ
リ、タピオカの原料にもなるキャッサバ、おなじみの白飯、ジャガイモやカボ
チャやタロイモやサツマイモを蒸したものなどが一枚の皿に盛り合わせにされる。

こうして、穀物いろいろの皿に対して煮魚が一品という形式の食事がテーブル
に運ばれた。白身魚の輪切りが浮かぶ煮汁には塩気とコクがあり、身はふっく
らと柔らかい。スープカレーに出会った時のように適切な食べ方を探りながら、
穀物類をひととおり試しにかかる。

マトケはポテトに似ていて僅かに酸っぱい。ウガリは芋羊羹のようになめらか
で淡泊。キャッサバはポソポソ繊維質。塩気のついていない穀物類はどれもず
いぶん平坦な味だ。むしろそういう性質の作物がかたっぱしから集められたよ
うでもある。

これらの穀物は風味の主張はしないけれど、歯触りや舌触りのバリエーション
が多種多様なので、単一な味が驚くほど膨らむことがある。米のつぶつぶ感、
芋のホクホク感、カボチャのしっとり感などが適度に混ざり、おかずの味をま
るめて濃厚なポタージュのような口当たりを生む。


日本にはかつて『代用食』という表現があった。主食はあくまで米なので、そ
れ以外の腹の膨れるものは米の代わりと言われたのだ。一方ウガンダでは、主
食をコレと定めてはいないゆえに、米が不作なら米が、芋が不作なら芋が主食
皿から消えるだけで済む。この合理的な主食の運用法は、飢饉に対して先人が
編み出したリスク分散ではないかと妄想させられる。


 ▽ウガンダご飯のいろいろ
 http://www.i-yan.com/travel/vol64/ugafood.html


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◇ボイスレコーダーリプレイ

なつかしい市場だ。イスラム圏では専門店舗の並ぶ通りが市場と呼ばれるが、
ここウガンダでは、ある区画内に小さな店が密集する東アジアと同じ形式の市
場が見られる。その中でもとりわけ大きいのがオウィノマーケット。靴や布や
日用雑貨をはじめありとあらゆるものがあり、安飯屋の密集地帯を抜ければ乾
物やら果物やら串焼きの歩き売りやら、さらにピーナッツの加工工場まで現れ
てすり潰したてのピーナッツを売っている。

 ▽オウィノマーケットの喧騒
 http://www.i-yan.com/travel/vol64/owino-market.html


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□旅のひとコマ:カイロ国際空港

空港内の両替所『トーマスクック銀行』の前で連れの日本人カップルが床に腰
かけて100ドル札を10枚近く出し、いちまーいにまーいと数えている。私はそ
の真前に立ってふたりを見下ろしながら、ゆかりおにぎりをむさぼっていた。

カドの無い酸味と清涼感のあるゆかりが、背の低い米粒に混ぜ込まれぎゅっと
握ってある。固炊きでみっしりとまとまり、食べ応えに充実感がある。

これは日本人宿サファリのシェア飯料理長さくらさんが持たせてくれたものだ。
世界の名物安宿の十指に漏れないサファリには、独持のサファリシステムがあ
る。その1つがシェア飯だ。シェア飯とは、同じ釜の飯を分かち合って日本食
をたらふく食べる、心と財布にやさしい営みのことだ。

物価の安いエジプトでは、シェア飯は節約ではなく完全に楽しみのためのイベ
ントという位置づけになっている。連日連夜、数名の有志が手間を惜しまず愛
情をたたき込んで料理を作る。すき焼きや塩さば、節分の太巻き、前日から仕
込むカレーまで、とにかく彼らは妥協というものを知らない。

数個の鍋で炊かれる白米は、これまたとどまるところを知らない旅行者たちの
空腹をなみなみいっぱいまで満たす。十数名で4.5kgの米を食べ尽くした夜も
あった。


「準備OK、お待たせ」

ふたりが隠しポケットに現金を分散させ終える頃、手にあったおにぎりは既に
姿を消しており、私はこめかみをもぐもぐと動かしている段階だった。

「じゃあ行こうか、とりあえず出国済ませて免税店でも覗こう」

ふたりは腰を上げた。その手からぶら提がるビニール袋の中には、さらに3個
のおにぎりがアルミホイルに包まれているのだった。


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◇テーブルの調味料

 ▽ウガンダの英国式バーのテーブルの上
 http://www.i-yan.com/travel/vol64/chomi070309.html


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┃   旅の最中のよい香り
│      発行者:いいやん

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