旅の最中のよい香りindex


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┃   旅の最中のよい香り Vol.065
│     2006/03/22 http://www.i-yan.com/
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 ○私は今ここにいます : ウガンダ共和国 カンパラ

オリオチャ、いいやんです。前回と同じウガンダからお送りします。

カンパラで根城にしている宿『ABC HOTEL』の裏道には『ABC PoolTable & Bar』
があり、1台のプールテーブルが昼から閉店までゆったりまわりつづけていま
す。宿とバーは中部でつながっており、宿泊客やスタッフの通り道と憩いの場
を兼ねたバーの店内は気楽な雰囲気です。

アフリカンたちは夜な夜な会話を楽しみながら静かにビール瓶をかたむけます。
そしてサッカー試合の放映日には、ギョッとするほど多くの人が行儀良くテレ
ビに群がります。

二日続けて、昼に大雨が通り過ぎていきました。エジプトに居た身としては、
長らく見ていなかった現象です。夜になるにつれ街全体が生ぬるい気だるい
空気に包まれていくような感覚があります。

 ▽ジャランジャラン・カンパラ
 http://www.i-yan.com/travel/vol65/kampala.html

──今号のもくじ──

  ■湿気の世界を考える
 ◆連載:What's you mean ?
  ■「ハローマイフレンド」
 ◆連載:テーブルの調味料


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□湿気の世界を考える

こぼした水がすぐには乾かない。乾物や茶葉やポテトチップがしける。服が汚
れやすく一日で着心地が悪くなり二日目には臭う。体を動かせば動かしただけ
熱を発して、発熱した分だけ肌が汗ばんでじとっとする。まるで初夏の日本だ。
ここはそんな湿気ありきの世界なのだ。


思い返すと、中東やエジプトは何もかもが乾いて風化してゆく世界だった。草
木も生えぬ岩山がそびえ荒野が広がり、日光は何にもさえぎられずに降ってき
て、直接ぶつかるものだけに強大なエネルギーを容赦なく伝えていた。

ウガンダに来てから、心の中のカラカラに干上がっていた何かが、日に日に潤
いを取り戻していくのを感じる。環境が変わると世界観のチャンネルが変わり、
行動や服装など細かい部分への配慮が変わるため、エジプトで一切不用だった
思考回路がいままた必要となり頭の中が復旧されていくようだ。


二つの世界を比べたとき特に大きく異なるのは衛生観念だ。乾きの世界の主食
にはパンが選ばれることが多い。外気にさらして放ったらかしておけるし、時
間が経ってもカリカリに乾くだけなので扱いは楽だろう。一方ウガンダでは、
主食である穀物類は蒸し器で加熱し続けてある。日本で私たちが白飯をすぐに
食べられる状態にしておくのに炊飯器で『保温』にするのと同じことだ。

多くの物資の乏しい国々の人々は食事を手で食べる。乾いたパンにおかずを挟
み乾いた手で食べる乾きの世界と、スープとごはんを手で混ぜて食べる湿気の
世界と、どちらがリスキーな状況かは一目瞭然だ。当前ながら湿気の世界の人々
は、食事の前に念入りに手を洗う(都合の良いことに水はたくさんある)。そ
して清潔さを保つためには、こまめに洗ったり滴を拭き去ったりするとよいと
いうことを経験から学んでゆく。


一事が万事、湿気を意識した行動方針は、食生活のみならず実生活のあらゆる
方面にあてはまる。実際ウガンダの人々は風通しの良い服装を好み、朝晩シャ
ワーを浴びたり夕涼みをしたりして、なるべく快適に過ごそうとしていたりする。

湿気の世界には共通する衣食住の文化があるようだ、と私は結論づけた。ウガ
ンダ式の文化は、それを知っていく中で日本への懐かしさとウガンダ人への共
感を私に何度も感じさせる。


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蛇足ではあるが、湿気のある中で快適な服装を追求すると、どうやらその形は
似てくるものらしい。婦人服屋の軒先で見つけたある服は19世紀中頃に栄えた
ブガンダ王国時代のデザイン。足元までの長さの大きな布をワンピースのよう
に巻き、肩をピンなどでとめ、腰に幅の広い帯を締めたマネキンの後ろ姿は、
ひと目で私に和服を思い出させた。

 ▽ウガンダ伝統の女性の着物
 http://www.i-yan.com/travel/vol65/wahuku.html


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◇今週のWhat's you mean ?

 ▽What's you mean ?
 http://www.i-yan.com/travel/vol65/what070322.html


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□「ハローマイフレンド」

歩いていると黒人男性にいきなりあいさつをされる。あれ以前に会ったっけ、
と思いつつ「ハロー」と返し、差し出すその手を握手する。彼は口を開き、

「で、お前の名前なんってーの?」

初対面かよ。平日の昼間から、暇をもてあましている男たちが街にはたくさん
溢れている。物乞いもいれば、ただただ歩く人々を見つめている人もいる。毎
日路上の同じ場所でマットレスを売る人、茶漉し(湯きり網)だけ両手に持っ
て見せてくる人、ビニール袋を5円で売り歩く人……不毛な職にもほどがある。

数少ない外国人旅行者と知り合うことは、彼らの趣味であり生活に新たな息吹
をもたらす希望でもある。だからこちらの意向は気にせず強引に人間関係を築
こうとあの手この手で迫ってくる。「いつ日本に帰るんだ?」「その時、俺を
連れて行ってくれないか?」雑談の多くはこんな山場を見せる。一人一人に対
応していたら、徒歩10分の道のりを抜けるのに1時間かかってしまう。

「チャイナー!」と呼ばれたり「ニイハオ、ニイハオ」と笑いかけられること
もある。無視するのも悪いから返事したいけど、中国人じゃなく日本人だって
ことを説明した上で、じゃあ急いでるからバイバイなんて悠長なことするのも
意味無く話が込み入るだけだ。未だにより良い返答が見つからない。


そんな風に人々をばっさばっさとやんわり断わりながら道を切り開く中で、そ
れでも食らいついてきてそこを通るたびにあいさつするようになる暇な男たち
がいる。

 「よう久しぶり、最近顔を見なかったな、元気か?」
 「元気だよ、ありがとう」
 「お前ウガンダで何してるんだ?」
 「市場でご飯食べたりしてる」
 「マトケを食べたか?あれはバナナだぞ」
 「うん、マトケもウガリも…ああ、ウガンダではポショって呼ぶんだっけ」
 「ウガリだってさ、あっはっはっは! ウガリってのはスワヒリ語さ」

今日は“カロ”を食べたんだ、と言うと皆口々に「どうだった?」と聞いてく
る。カロはキビの粉で作るそばがき状のもので、むにゅ〜んと強力な弾力はき
びだんごそのもの。置いてる店で言えば主食皿に一緒に乗せてくれる。それか
らあれを食べたんだ。えっと………モロコニ!

 「ハハハーッ!モロコニーッ!!」

黒人たちは大喜びだ。一人は握手まで求めてきたほど。モロコニは牛のスネを
骨ごと煮込んだ料理で、肉は少なくクニュクニュとした皮やスジの触感を楽し
む料理だ。おかずとして主食と共に食べる。

 「うまかったか?」
 「うん」
 「あれはそんなうまくないよ」

えー…まあ地元民的には、肉そのものよりグレード低い食べものなんだろう。
ともあれ、ローカルフードの話題が楽しいのは万国共通だ。


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◇テーブルの調味料

 ▽カンパラの市場の飯屋のテーブルの上
 http://www.i-yan.com/travel/vol65/chomi070322.html


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