旅の最中のよい香りindex


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┃   旅の最中のよい香り Vol.067
│     2007/04/29 http://www.i-yan.com/
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 ○私は今ここにいます : エチオピア連邦民主共和国 アディスアベバ自治区

サラーム、いいやんです。ケニアの主都からエチオピアの主都へのフライトを
経て、南部の都市をめぐったのちにまた主都のアディスアベバへと戻ってきました。

陸路で国境を越えるときにはじりじりと変化する文化を間近に感じられますが、
飛行機で国境を越えるときは異文化のまっただ中へ一気に突入する感覚です。

本日は2週間のエチオピア滞在の最終日。明日にはイタリアのローマに居るな
んて実感は、湧かそうとしても湧くものではありません。

 ▽アディスアベバの風景
 http://www.i-yan.com/travel/vol67/adis.html

──今号のもくじ──

  ■旅のひとコマinジンカ
 ◆連載:ムービーリプレイ
  ■エチオピアでの珍しくて貴重な経験
 ◆連載:テーブルの調味料


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□旅のひとコマinジンカ

早朝5時、エチオピアの南部の辺境地ジンカの空は一面の星空だ。ぼんやりと
した天の川が空に流れ、地上にはひんやりとした空気が流れている。エジプト
のカイロで別れ、エチオピアのアディスアベバで再会した私たち三人は、荷物
を背負ったまま宿の中庭を歩き、門を開け表通りの静けさへ入っていった。

昨日のうちに場所をたしかめたバス発着所に着くと、既に車内にはたくさんの
人が座席につき出発を待っていた。発券係は私たちを見るなりこう言った。

「 No Space ! 」

エチオピアのバスは朝が早い。都市間の道路は未舗装で街灯は無く、いくつも
の峠を抜ける険しい道だ。そのため、遠くの町へ行くバスは夜明けと共に発車
するのだ。


しばらくするとある男があぶれた客に名前を聞き名簿を作りだした。どうやら
二台目のバスを用意するらしい。一台目のバスが出て20分後、男が用意した新
たなバスが私たちの目の前に到着した。それと同時に乗降口には我々を含む十
数名の客たちが殺到した。

これが、朝が早い理由のもう一つ。要は幼稚園で遊んだ椅子取りゲームの応用
編だ。先ほど作成した名簿は何の意味も持たず、いまこの瞬間に狭い扉をごり
押しで突破し、座席に荷物を置いた者が乗車権を獲得できるのだ。

ときには駐車場の開門と同時によーいドンで100メートル先のバスまで徒競走
をすることもあり、ときには旅仲間と『席取り係』『アシスト役』『荷物運び
役』というふうに分担してチームプレイをすることもある。

ここはアフリカ。食いっぱぐれた者を救済する仕組みは、そこに居合わせた者
同士の気まぐれ以外には存在しない。今回、たまたま用意された別のバスに乗
れたのは幸運なことで、さもなくば早朝4時半起きは報われずに出発は明日に
延期となってしまうところであった。


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◇ムービーリプレイ

アフリカの地は荒野ではない。緑あふれる大地が360°囲む中をバスはガタガ
タと走ってゆく。大自然の流れる景色はいくら見ても飽きるものではない。大
きな木の脇を通れば走行音に驚いた鳥たちが飛び去り、村に近づけば道いっぱ
いに広がった牛の群れとすれ違う。

 ▽エチオピア南部 バスの車窓から
 http://www.i-yan.com/travel/vol67/acrossariver.html


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□エチオピアでの珍しくて貴重な経験

エチオピアはアフリカ最古の独立国とも言われ、植民地化されたのは1936年か
ら1941年までのたった5年間だけだ。そのためアフリカを離れた黒人たちにとっ
てエチオピアへの思い入れは強く、アフリカ回帰運動の一つとして起こったラ
スタファリズムという宗教運動は現在も世界的に知られている。

そんなわけで、いまエチオピアのシャシャマネにはいくつかのジャマイカン・
ビレッジが存在し、ラスタファリアンが独自の様式で生活を送っている。ケニ
アで出会った友人の紹介でその村に住むあるラスタマンに会いに行くと、突然
の訪問にも関わらず彼は私たちを家へ招き入れもてなしてくれた。

 ▽ラスタマンの住むジャマイカ村
 http://www.i-yan.com/travel/vol67/rasta.html


ところ変わってジンカ。ここにはムルシ族という特徴ある種族が住んでいる。
彼らは下唇のすぐ下に穴を開け、その穴を徐々に広げながら下唇そのものを伸
ばし、最終的にはそこに陶器の皿をはめるという、他に類を見ない壮絶な人体
装飾を行っている。

 ▽ジンカマーケットとムルシ族
 http://www.i-yan.com/travel/vol67/mursi.html


こうした経験が一体どれくらい貴重なものなのか、旅をしながら私は疑問を抱
くことがある。

遺跡、文化、料理、技術、気候、地形、生物、それこそジャンルはざまざまで、
私たちにとって珍しいものは地球全土にありすぎるほどある。しかしそれが貴
重であるかどうかは珍しさとはまた別の観点の話だ。珍しさに遭遇して驚きの
感情に振り回されるのは一種の娯楽であり、それが陳腐で身近なものになれば
いずれ飽きてしまう。

貴重なものとは、得難いものであり失いたくないものだ。経験というものは完
全に忘れる以外に失う方法が無いため、珍しければすべて貴重な経験であるか
のように私たちは混同してしまうし、珍しくなければ価値のないものであると
すら考えてしまいがちだ。

しかし実際には、どこで何をしていても私たちはたくさんの貴重なものに触れ
ている。私たちはいまここで一度きりしかありえないことの中を生きているか
らだ。瞬間瞬間を見逃さず、すみずみまで味わって吸収したならば、最後に思
うべきことはきっとこれだろう。「ごちそうさまでした」。


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◇テーブルの調味料

 ▽ジンカマーケットの飯屋のテーブルの上
 http://www.i-yan.com/travel/vol67/chomi070429.html


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┃   旅の最中のよい香り
│      発行者:いいやん

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