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┃ 旅の最中のよい香り Vol.071
│ 2007/07/01 http://www.i-yan.com/
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○私は今ここにいます : 日本国 東京都足立区
ドーモスイマセン、いいやんです。
二年間に渡った旅はフィナーレを迎えました。
旅が終わるということ。
それは、旅が始まることと同じだけの変化の中に身を置くことです。
長い旅が始まり、旅の中に自分自身の生活リズムが生まれるまでに時間を要し
たように、帰国してから日本の暮らしに歯車を噛み合わせるには、またそれな
りの試行錯誤を経ていかなくてはなりません。それまではまだ旅の中。いわば
日本に滞在しているのです。
私は今、旅の残り香が漂う中を模索しています。
──今号のもくじ──
■旅グッズたち表彰式
■俺級世界ランキング第一位発表会
■旅の終わりに
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□旅グッズたち表彰式
旅の間ずっと、身の回りには様々なモノがあった…
自転車は日本旅行の相棒だった。タイヤの磨耗により一度だけパンクしたが、
それ以外はさしてトラブルも無く軽快な走りで私を鹿児島まで運んでくれた。
その後、沖縄から東京へと運送され、実家で私の帰国を待っていた。
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衣類はどうしても最小限になる。シャツと下着は二,三枚、上着は一枚、ジー
ンズと部屋着のパンツが一本ずつ。使い続けるうちに愛着が湧いてゆくが、同
時に生地が伸びたり破れたりして買い替え時も近付く。どこまでも連れてゆく
ことはできない。
唐突に別れが訪れることもある。都市間を移動するバスに乗ってから気付くの
だ。お気に入りのTシャツを干しっぱなしでチェックアウトしてしまったことに。
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衣類以上に親密な付き合いになるのがサンダルやスニーカーなどの足回りだ。
中でも一番の思い出なのはベトナムで買った二代目サンダルで、購入後すぐ
に剥がれてしまった靴底を針金やビニール紐で補強しながら使っていた。街
角の靴屋に3ドルを払って底をしっかり縫いつけてもらってからは、金具が
金属疲労で壊れるまでのべ8ヶ月間使った。
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そして初めからずっと毎日のように使い続けたものたち。50リットルのバック
パックには平均20kgほどの荷が入っていた。デジタルカメラは本体にプリント
された文字が擦れて消え、外殻がゆがんで隙間ができている。ノートPCは振
動に耐えきり帰国したいまでも現役でいる。PCを守り抜いた金属アタッシェ
ケースは、時にはテーブル時には貴重品入れとして活躍し、2年分の細かい傷
が刻み込まれた。
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http://www.i-yan.com/travel/vol71/thanksforgoods04.html
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□俺級世界ランキング第一位発表会
言葉は自由だ。世界一って言葉すら、主観的な判断基準の中で軽々しく使える。
●世界一よくできた“個人製作ドラえもん”
日本のあちこちで立像を見かける。個人商店や町会などで作っているらしいが、
たまにアニメ等のキャラクターを勝手にパクったものもある。広島県豊田郡三
原市で遭遇したドラえもん像は、朽ちかけてはいるけれどプロの加工技術を感
じることができた。
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●世界一かわいい商店
ラオスの古都ルアンパバーンは、北部山岳民族が行商にやってくる慣習のある
興味深い町だ。モン族の常設マーケットで、世にも可愛いお店を見つけた。
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http://www.i-yan.com/travel/vol71/rank02_no1.html
●世界一インパクトがあった“祭”
もうすぐリシュケシュやハリドワールでは『ボンボンまつり』が始まる。私が
約1年前にインド北部で遭遇した祭だ。ヒンドゥー教シヴァ派の若者たちが大
挙してガンジス川に押し寄せ、その水を水筒に入れて山道を「ボンボンッ!ボ
ンボンッ!」と掛け声を合わせならひた走り、山奥のシヴァ寺院まで運ぶのだ。
聖地に異様な熱気が渦巻き、人口密度は数倍に膨れ上がる。
彼らの衣服は修行僧と同じオレンジ色で、でかでかとシヴァの姿が描かれてい
るのが特長だ。どう見ても彼らはシヴァのファンでありサポータであり信者で
ある。神様の存在感が日本でのアイドル並みに彼らの心をつかんでいる。
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http://www.i-yan.com/travel/vol71/rank03_no1.html
●世界一ぬるい“麺料理”
インドネシアのジャカルタで見つけた麺料理『ミー・ジュヒ』。材料は全て下
ごしらえを済ませて容器に入れ常温で置いてある。店主は客が来るまでタバコ
をふかしてボケ〜ッとしており、注文と同時にそのままの手で調理を開始した。
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http://www.i-yan.com/travel/vol71/rank04_no1.html (動画あり)
●世界一だらけてた“猫”
インドとパキスタン国境のパキ側の商店の店先にて。
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●世界一の絶景に臨む“バー”
タイの小さなリゾートアイランド、パンガン島にある『アムステルダム・バー』。
森林の中の小高い丘のてっぺんにあるここからは、視界いっぱいに空と海と緑
とが広がる。夕方になれば南国の陽射しは去り、湿気のある涼しい風がゆるや
かに流れる。そんな時刻の西向きに作られたテラス席からの眺めには言葉を失う。
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●世界一川の中を再現している“スープ”
内陸の国ラオスのバンビエンは、近年観光化されつつある素朴で平和な村だ。
夕方になると現れるおばちゃんの惣菜屋台で売られるスープには、川エビ、沢
ガニ、ゲンゴロウ(?)、ヤゴ(?)その他もろもろの川の虫たちが、水草の
ような緑色の植物と共に煮込まれていた。おいしゅうございました。
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http://www.i-yan.com/travel/vol71/rank07_no1.html
●世界一家具の少ない“シングルルーム”
安宿のメッカ、タイのバンコクで宿泊した100バーツ(約300円)の部屋。設備
を挙げれば以下のようになる。共同トイレ・水シャワー、扇風機、鏡、ベッド、
照明。
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http://www.i-yan.com/travel/vol71/rank08_no1.html
●世界一なごむ“売店”
ケニアのナイロビ市内の商店には驚いた。店内と店外が完全に鉄格子で分離さ
れ、小さな窓口から商品とお金のやり取りが行われるのだ。
そんな世界と裏腹にアジアはゆるい。インドネシアのジャカルタ駅に着いたの
は暑い暑い日中のことで、労働意欲なんてものは完全に溶けて地面に水たまり
を作っている時間帯だった。
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●世界一たくさんの電気店が集まった“建物”
タイのバンコクでPCの部品を探していると、会う人誰もが『PANTIP PLAZA』
へ行けと言う。バスに揺られて着いたそこは秋葉原も顔負けの電気店密集ビル
だった。個人商店がひしめく市場ノリを、食材や衣類ではなく電気機器でやっ
たらこうなったのだろう。
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http://www.i-yan.com/travel/vol71/rank10_no1.html
●世界一広い“バスターミナル”
アフリカ北東部の国々で市民の足となっているのは『マタトゥ』と呼ばれる14人
乗りのバンだ。時刻表はとくに無く、乗客が満員になるまで発車しないところ
がいかにもアフリカっぽい。そんな感じだからこれだけ広大な土地いっぱいに
たくさんのバスが集中してしまう。出入り口はいつも渋滞している。
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●世界一質素なホテル料理+機内食
タイからインドへの飛行機の乗り継ぎのため一泊したバングラデシュの主都ダッ
カにて。パスポートを空港に預けて強制連行されるトランジットホテルは、見
知らぬ他の乗客と3人の相部屋だわ、窓の網戸が破れていて蚊は入ってくるわ、
およそ航空会社のサービスとは思えないものだった。せめてバングラデシュ料
理が食べられればという淡い期待を胸に翌朝を迎えたのだった。
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http://www.i-yan.com/travel/vol71/rank12_no1.html
●世界一でっかい“肉の塊”
日本でもワゴン車屋台でちらほらと売られている『ドネルケバブ』という料理
がある。肉塊の表面の焼けた部分をナイフで削り取り、野菜と共にパンに挟ん
だものだ。発祥の地トルコと周辺のアラブ圏では日常的に食べられており、ヨー
ロッパの各国でもファストフードとして広く知られている。
エジプトのカイロにあるローカルフードチェーン店『GAD』の店頭では、そ
のドネルケバブを作るためのちょっと計り知れないサイズの肉塊がストーブで
じりじりと焦がされていた。
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●世界一いかがわしい“酒”
『BECALDOI』『OXFORD DRY GIN』『TEACHAR'S』『DINSMORE』『V.I.P.S』等な
ど、一見有名ブランドぽいけれど二目で怪しいとわかる酒が流通しているのは、
禁酒が教義でもあるイスラム国家のエジプト。
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●世界一幼い“酔っ払い”
『エチオピアの良心』と私が勝手に名付けた、エチオピアに住むコンソ族。
彼らの食生活は独特で、朝、昼には食事代わりに穀物を取り除いていない地ビ
ールを飲む。村では真昼間から大人たちが蒸留酒やアニスの香りの強い酒を酌
み交わしており、私が訪れた家の女の子は地ビール入りのコップをずっと持っ
たまま、ときおりぐびりぐびりと飲み込んではプハーッと美味しそうな顔をし
ていた。
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●世界一かわいい猫と子供のいる“街”
世界各地の猫のかわいさと子供のかわいさは妙にシンクロしているように思う。
中でも頭一つ抜けていたのが、シリアのパルミラで出会った猫と子供だ。
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●世界一遊ばれちゃってる“猫”
タイのバンコクの安宿『セントラル・ゲストハウス』で飼われているダム(黒)。
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●世界一難易度の高い“調理パン”
タイのバンコクで人気のそのパン屋は、焼き上がりの時刻になると行列が出来る。
ふわふわの生地の中に具がたっぷり入った大きなパンが1つ30バーツ(約90円)。
中身は見えず、料金表はタイ語で、英語が一切通じないため、その全容を把握
するのは難しい。その店で試しに『ミックス』を選択してみると、中には何と
ソーセージ、豚でんぶ、レーズンの3種の具がたっぷり入っていた。
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●世界一チープな“チェッカー”
チェッカーはチェスボードを使い、互いに12個のコマを動かして遊ぶシンプル
なゲーム。競技人口の分布は東南アジアの田舎からマンハッタンのオフィス街
の公園まで、さらに近年のWindowsには『インターネットチェッカー』が標準
搭載されているほど有名なゲームだ。さて、ここ世界最貧国の一つエチオピア
の市場の奥でも、身なりの良い二人の紳士がチェッカーに興じていた。
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http://www.i-yan.com/travel/vol71/rank19_no1.html
●世界一デジカメが役立つ“瞬間”
旅の中でのデジカメの利点といえば、フィルムを持ち歩かなくて良いとかCD
に焼いて仲間と分け合えるとか撮らせてもらった相手にすぐ見せられるとか、
挙げ出したらきりがない。しかし、インドの山奥の料理店で仲間たちとくつろ
いで遊んでおり閉店時間となった時に、デジカメがこうも役立つとは思いもし
なかった。
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●世界一指の多い“人間”
小指の脇にちっちゃな“第六指”がある人間がいる。テレビで見たことはあった
けれど、実際に遭遇するとはね。
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●世界一乗車率の高い“車”
パキスタンの相乗りトラックは、東京のラッシュアワー並みのことを平気でやっ
ている。乗れるだけ乗るのはアジアの常識か。
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●世界一テンションが上がる人たちの“国籍”
エジプト人のテンションに秘められた瞬発力やポテンシャルはものすごい。国
の経済を観光産業が支えているだけあり、観光客へのサービス精神は街中の人
の心に盛りだくさんだ。
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●世界一の“空の色”
赤道直下のバリ島には一度たりとも同じ空は無い。周囲の海から立ち上る水蒸
気は上空で渦巻き気流となり空にレンズとプリズムを作り出す。宇宙空間を直
進してきた光線が空気の層をかすめ、回折したその色が地上に降る頃、クタビ
ーチには水平線に沈む燃えるような赤色を見るために人々が集まる。
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http://www.i-yan.com/travel/vol71/rank24_no1.html
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□旅の終わりに
私はこの世界について、私が見聞きした範囲のことがらしか知らない。旅が長
くなり知識が広がるにつれ、未踏の地が増え未知のものが増えてゆくのを感じた。
世界地図を広げてみれば、私たちはどこにどんな大陸がありどんな国や都市が
あるのかをたやすく知ることができる。しかしその知識に実感を加えるために
は、自分自身の行動がその土地の何かに繋がらなくては始まらない。
これは全ての人について平等に言える条件だけれど、人は物理的に遠くにある
ものを五感で思うがままに認識することができない。そこから伝わってくる情
報でおおまかに捕えることしかできないのだ。
そこを変えることはできない。それでも私たちは“とにかく知りたい”という
正体不明の要求にかられて、不十分でもいいから情報を得ようとする。現在、
最も発達した情報処理手段であるコンピュータを通して伝わるものに、旅の経
験の真実味をどれだけ乗せることができるか、私にとってこの2年間の旅はそ
こを考え続けるものであった。
2007年7月1日 いいやん
『旅の最中のよい香り』おわり
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